エベレット論文の意訳 第1回
この記事はHugh Everett,IIIの書いた多世界解釈についての原論文"Relative State" Formulation of Quantum Mechanicsについて書いています。投稿された雑誌はReview of Modern Physics Volume29,454です。
多世界解釈は量子力学の解釈の一つであり、宇宙論などとの相性もよく、近年では量子コンピュータの発想の原動力にもなりました。
以下は、論文の意訳です。
1序章
一般相対論を量子化しようとすると、時空の幾何のような基本的な構造に量子化を適用することになるが、このことで量子力学の現在の形式と解釈についての深刻な問題が生じる。この論文では量子力学の基礎を明確にすることを探究する。ここでは一般相対論への適用がしやすいように量子力学を再定式化する。
この再定式化は通常の量子力学の形式と矛盾するものではなく、より一般的で完全なものであり、通常の量子力学の解釈はこれより導出することができる。
この新しい形式と古い形式との関係はそれゆえにメタ理論的な関係となる。つまり、これによって古い理論はその自然さや整合性、適用領域を調査し、明確にすることができる。
新しい理論は通常の理論とくらべて極端な逸脱のもとにあるのではない。新しい理論においては、古い理論にあった観測についての特殊な仮定を除いている。そのことで新しい理論は新たな特徴を獲得している。この理論における量と経験世界の性質との間のなんらかの同定が可能になる前に、理論自体をそれ自身だけで分析する必要がある。その分析によって削除した仮定である通常の理論における観測が明確な役割をもって導かれる。
我々は通常の量子力学の形式について簡潔に述べるところから出発し、理論の修正を求める動機について議論する。
2章へ続く