超幻日記

素粒子、量子論、宇宙論のことを辺境にいる一人の視点から改めて眺めてみます。単なる勉強帳になるかも。。

エベレット論文の意訳 第3回 孤立系の内部における量子力学


この記事はHugh Everett,IIIの書いた多世界解釈についての原論文"Relative State" Formulation of Quantum Mechanicsについて書いています。投稿された雑誌はReview of Modern Physics Volume29,454です。

多世界解釈量子力学の解釈の一つであり、宇宙論などとの相性もよく、近年では量子コンピュータの発想の原動力にもなりました。

以下は、論文の意訳です。

第3章 孤立系の内部における量子力学




この論文では純粋に波動関数のみでそれが完全な理論であるとみなす(プロセス2だけを採用する)ことを提案する。どこにおいてもどんな時間においても線形波動方程式に従う波動関数は例外なしにすべての孤立した物理系にたいする完全な数学的モデルを供給していることをこの論文は主張する。
そして、さらに、外部観測を受けるすべての系はより大きな孤立系の一部であることを主張する。

波動関数は先験的な解釈なしに基本的な物理的な実在であるとみなされる。解釈は理論の論理構造の探究の後にもたらされる。そこでは常に理論自身がその解釈に対するフレームワークを設定する。

どんな解釈についても理論の数学的モデルを経験に対応づける必要がある。この目的のために、観測者にたいする抽象的なモデルを定式化する必要がある。抽象的なモデルはその理論の枠内で物理系として扱う事ができるようにする。そして、そのようなモデルの観測者達が他の部分系と相互作用していることを含むような孤立系を考える必要がある。そして、観測者が周囲の部分系と相互作用の結果として起こる変化を推定し、それを経験のなじみ深い言語を用いて変化として解釈する必要がある。

第4章では構成している部分系の状態の言葉による複合系の状態の表現について議論する。数学的にはそれは相対状態の概念を導く。それは次のような意味である。構成している部分系は複合系から独立になんらかの単一でよく定義された状態であるということはできない。一つの部分系にたいする状態を任意に独断的に選ぶことは複合系の残りの部分について唯一の相対状態を対応させたことになる。この相対状態は通常最初に選んだ部分系にたいする状態の選択に依存する。従って一つの部分系の状態は独立した存在ではなく、残りの部分系の状態によってのみ特定される。言い換えるならば、部分系が占めている状態は独立ではなく、相関している。系の間のそのような相関は系達が相互作用しているときはいつでも生じる。今考えている形式では、すべての測定と観測過程が単純に系の間の強い相関を生むような相互作用とみなされる。フォン-ノイマンによる観測のモデルのようなものはこの観点から分析される。

第5章では観測問題についての抽象的な扱いを与える。結果がもっとも一般性を持ち、量子論のどのような形式にも適用可能であるようにするため、部分系の状態から形成される複合系による一般的な規則と重ね合わせの原理のみを用いる。観測者の状態は観測対象の系の状態と相対的に記述される。観測者の経験(磁気メモリーや計測システム等)はプロセス1を基礎とする量子力学の通常の”外部観測者”の予測と一致する。

第6章では量子力学の”相対状態”形式を要約する。


第4章に続く