超幻日記

素粒子、量子論、宇宙論のことを辺境にいる一人の視点から改めて眺めてみます。単なる勉強帳になるかも。。

可換環の極大イデアル、素イデアル

以下は可換環のこと

定義 極大イデアル

極大イデアルは、非自明なイデアルの包含関係において極大のもの。

定理1 極大イデアルであることはその剰余環が非自明なイデアルをもたないこと

定義 体

非自明なイデアルをもたない環

定理2 極大イデアルの剰余環が体

設定

  1. 可換環R
  2. RのイデアルI(ただしI≠R)

主張

Iが極大イデアル ⇔ R/Iが体

証明

定理1より、
Iが極大イデアル ⇔ R/Iが非自明なイデアルをもたない。⇔ R/Iが体

定義 素イデアル

a,b∈Rでab∈Iのとき、a∈Iかb∈Iであること。

同値な定義

Iが可換環Rの素イデアルであるとはR/Iが整域であること

定理3 極大イデアルは素イデアル

証明

定理2よりIが極大イデアル ⇔ R/Iが体 ⇒ R/Iが整域 ⇔ Iが素イデアル
よって極大イデアル⇒素イデアル

層の定義

前層...位相空間X上の前層F

開集合 U ⊂ X に対し アーベル群 F(U)
開埋め込み V ⊂ U に対して アーベル群の準同型 ρUV:F(U)->F(V) .. 制限写像
ρUVの制限:
1. ρUU:F(U)->F(U) = 恒等写像
2. 3つの開集合 W⊂V⊂U に対し ρUW = ρVW.ρUV

ρUV(s) は s|V とも書く。

層 F

  1. 前層である
  2. s∈F(U)があるとして、 all i s|Vi = 0 -> s=0
  3. 各si∈F(Ui)に対して(si|Vi∩Vj = sj|Vi∩Vj) -> ∃s∈F(U)(s|Vi = si)

用語:
U上の切断 := F(U)の元
大域切断 := F(X)の元 ... Γ(X,F)と書く。
茎 ... x∈位相空間Xにおける茎Fx := lim_x∈U F(U)

層化 前層から層を構成する手続き

層の押し出し f_* F ... f: X -> Y , 位相空間 X,Y

f_* F(U⊂Y) := F(f^-1(U))

層の引き戻し f^-1 F ...

f^-1 F(V⊂X) := lim_f(V)⊂U F(U)

注: 必ずしも層にならないの層化の必要あり

環の層

F(U)が環

局所環付き空間 (X, O_X) .. O_Xを構造層と呼ぶ。

Xは位相空間
O_Xは環の層

x∈Xにおいて
O_Xの茎 O_X,x が局所環であること。

射 : (X1, O_X1) -> (X2, O_X2)

連続写像 f:X1 -> X2
環の層の射 ψ:OX2 -> f*OX1

x∈Xにおいて
誘導される射: OX2,f(x) -> OX1,x
が極大イデアルを極大イデアルに移すこと。

米田の補題

圏Cから(Sets)への関手Fがあるとする。
Cの対象Aを取る。

米田の補題
θ:Nat(H^A, F) -> F(A) がbijection
θ(η) := ηA(1_A)

証明:

主張1: θがinjection

ηは自然変換なので、f:A->Bとして

F(f).ηA = ηB.H^A(f)

が成り立つ。

H^A(f): hom(A,A)->hom(A,B)
ηB: hom(A,B) -> F(B)

なので、
ηB(f) = ηB(H^A(f)(1_A)) = ηB.H^A(f) (1_A) = F(f).ηA (1_A)

ηはηA(1_A)で完全に決まる

主張2:θがsurjective

任意のa ∈ F(A)に対して
aB*(f) := F(f)(a)とする。

g:B->Cとして

aC*(g.f) := F(g.f)(a)

F(g)(aB*(f)) = F(g)(F(f)(a)) = F(g.f)(a) = aC*(g.f) = aC*(H^A(g)(f))
よって
F(g).aB* = aC*.H^A(g)

よって、a*は自然変換 H^A -> F

ここで、θ(a*) = aA(1_A) = a
より、θはsurjecve

本当か。。

Z/12Z

Z/pZのイデアルの計算をしてみました。
https://gist.github.com/KatagiriSo/7a611bd9b9e25b4db13e77d4bbf84d9e

これを使ってZ/12Zのイデアルを求めてみると
[0],[0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11],[0,2,4,6,8,10],[0,3,6,9],[0,4,8],[0,6]
つまり
(0), Z/12Z, (2), (3), (4), (6)ということがわかります。

包含関係は
(0) ⊂ (6) ⊂ (3) ⊂ Z/12Z
(0) ⊂ (6) ⊂ (2) ⊂ Z/12Z
(0) ⊂ (4) ⊂ (2) ⊂ Z/12Z

つまり極大イデアルは(2),(3)
イデアルは(0),(2),(3)

楽しい。。

(0)は素イデアルでないとの指摘がありました。
確かに3*4=12=0より、3もしくは4が(0)になっていないといけないのになっていないという判例がみつかる。。
Zとは違うのだなあ。

環のスペクトル

環のスペクトル - Wikipedia


環の素イデアルの集合を環のスペクトルと呼ぶ。環RとしてSpec(R)と書く。

Spec(R)にはザリスキ位相を入れることができる。

イデアルは部分多様体のような役割になり、一方で極大イデアルが点の役割を果たすようになるらしい。

昇鎖条件と降鎖条件

昇鎖条件 - Wikipedia

大小関係の列があったとして(詳しく言うと半順序集合)、大なりがどこかで止まる列を昇鎖条件を満たすという。
反対に下がっていくほうがどこかで止まるのが降鎖条件。

ネーター環というのはイデアルの包含関係が昇鎖条件を満たしているもので、
アルティン環は逆に降鎖条件の方を満たすものをいうらしい。



ネーター環 - Wikipedia
アルティン環 - Wikipedia

真のイデアル

イデアル (環論) - Wikipedia
イデアル [物理のかぎしっぽ]



イデアルというと環自身がそのままでイデアルの一つであるが、そういうイデアルでないイデアルを真のイデアルと呼ぶことがある。

さらにいうと、0と環そのものという二つを自明なイデアルと呼んで、そういうイデアルでないイデアルを純イデアルと呼ぶことがある。


極大イデアルはどんな真のイデアルにも含まれないものといえる。

剰余環  環はイデアルで割れる

剰余環 - Wikipedia

商環ともいう。環はイデアル分を足しても同値とみなす同値類によって類別されて、
つまり、
a〜bをb-a∈Iとして、[a] = a + I というような元をつくる。[a] + [b] = [a + b] みたいな自然な感じに演算が定義できて環になっている。

いわば、環の中のイデアルをI=0につぶしたものともいえる。

ちなみに
割るイデアルが極大イデアルだと体になる(剰余体という)。
割るイデアルが素イデアルだと整域になる。つまり剰余環にゼロ因子がない。

素イデアル

素イデアル - Wikipedia

イデアルが元の環の積でかけている時は必ず、その積の少なくとも片方がそのイデアルの元になっているという性質を持つイデアルを素イデアルと呼ぶ。

つまり、環R、イデアルPとして、環Rの元a,bでab∈Pのとき、a∈Pかb∈PとなっていればPは素イデアル

直感的に考えてみる。イデアルとはそもそも病原体のようなものだ、その積は必ず病がうつる。なので病になっている元が積に分解できるとしたとき、少なくともどちらか一方が病を持っているという状況は自然な気がする。
そういうものを素イデアルと呼んでいる。逆に、普通のイデアルだと、積にわけたときにどちらもそのイデアルに属しないという場合があるということで、こちらの方が不自然な気もする。


環Rの素イデアルのなす集合をSpec(R)と書く。今後良く出てくるはず。

極大イデアル

極大イデアル - Wikipedia


イデアルは集合として包含関係をつけていくことができる。その包含関係の極大のものを極大イデアルという。当然、環について極大イデアル複数あって良い。
逆にいえば極大イデアルが一個しかない環は特殊であって、そのような環は局所環と呼ばれる。

単項イデアル整域

単項イデアル整域 - Wikipedia

整域なんだけど、つまりゼロ因子を持たない環なんだけど、それに加えてその環のイデアルがどれも単項イデアルになるような環。主環、主イデアル整域、principal ideal domain、PIDとも呼ばれる。

単項イデアル整域つまりPIDであると何が嬉しいかというとネーター環になってくれるし、一意分解環(UFD)にもなってくれるところ。
ネーター環になってくれるというのはある主の有限性をもつということだし、一意分解環はその名の通り一意分解と関係する。そういうのが嬉しい。詳しくはどこかで。

整域

整域 - Wikipedia

0以外に0因子を持たない可換環。ちなみに{0}(自明環)はだめとする。

割る(整除する)ことができるようになる。

a,b∈Rが、ax=b、x∈Rのとき、a|bとかく。

a|1のとき、aを単元と呼ぶ。
a|bでb|aならa,bは同伴と呼ぶ。

あと既約元と素元という概念があるらしい。

イデアルの生成

環Rの部分集合をXとする。
今簡単のためX={x1,x2}とする。
このXによって生成する左イデアル
{r1x1+r2x2|r1,r2∈R}

同様にXによって生成する右イデアル、両側イデアルも定義できる。

単項イデアル(主イデアル)

Xが一個だけX={x}で生成されるイデアル

(x)と書いたりする。